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020...ばつが悪そうに目を逸らした

昼休み。私は別のクラスのはるひと屋上でお昼ご飯を食べるべく、廊下を歩いていた。

「あれ?」

見知った顔が二つ、こっちに向かって歩いてくる。

「佐伯くん、ハリー!」
「お?花子か、オッス」
「げ」
「オッス、ハリー。げって何よげって。…ていうか二人で何してるの?」

珍しい組み合わせに私が首を傾げると、ハリーは得意げに鼻を鳴らした。

「へへーん。これから佐伯にギター教えてやるんだよ」

納得。瑛くんと、この前喫茶店でお茶したときにギターが上手く弾けないと彼は言っていた。

「へぇ!ハリーが先生なら、ばっちりだね」
「だろォ?」
「うんうん。だってハリーのギター、素敵だし上手だし、きっとて…佐伯くんもすぐに弾けるようになるよ」
「………」
「ま、俺には遠く及ばないだろーけどな!」
「ふふ」
「針谷、早くしろよ。昼休み終わっちまう」
「はいはい。つーかハリーって呼べ」
「ヤダ」
「あ、じゃあね二人とも!がんばってね!」

反対側に歩き出す二人に手を振ったものの、瑛くんはぶすっとした顔のまま、行ってしまった。ハリーは笑ってたのに。
そんなにハリーのこと、ハリーって呼びたくないのかな?



「あんたそれ、ちゃうわ…」
「えっ?」

屋上に行くのが遅れた理由を説明していた成り行きで、はるひにさっきの出来事を話すと、ため息をつかれた。
ベンチではなく地べたに座ってフェンスに凭れてお弁当を口に運んでいた私は何が違うのかわからずに、またも首を傾げる。

「え、じゃあ私、何か悪いことしちゃったのかな…」
「これやからな〜…ホンマ…。はぁ、花子」
「はいっ」
「ええか〜?それはな、男のヤキモチや!」
「え?」

ヤキモチ?瑛くんが?
でも一体どうして??

「男ってのはな、単純でアホなんやで?自分の前で他の男のこと褒められたら、気分が悪なるのは当然や。……確かにハリーのギターはめっちゃええねんけど…」
「え?最後なんて?」
「へっ!?いやっ、そ、それはどうでもええねん!とにかく!アンタ放課後にでもフォローにいかなあかんで?」
「フォロー?…えっと、うん…わかった」



とは言っても。
何をどうフォローしたらいいのかわからない。とりあえず昇降口で瑛くんを待っているのはいいものの、機嫌が悪いままじゃ出方がわかんないし、プリンスの取り巻きに囲まれてたら話もできないかもしれない…。
困ったなぁ。

「何が困ったんだよ」
「えっ!?いたっ!」

突然頭にチョップが降ってくる。これは間違いなく瑛くんだ。

「お前みたいなノーテンキでも困ったり悩んだりするのか?」
「失礼な!色々考えてるんです!」
「あ、そう。で?お前、ここで………誰か、待ってたわけか?」
「えっ?」

ちらちらと落ち着きなく視線をさまよわせる瑛くんは、“誰か”のところをすごく小さな声で、不安げに言った。
あ、私がハリーを待ってるとでも思ってるのかな。…はるひが言ってたヤキモチって当たってるのかな。

「待ってたよ、瑛くんを」
「え?お、俺?」
「そうだよ」
「いや、え?そう、なのか?」
「もー!そうだって言ってるじゃない!遅れたからチョップね」

私が振り上げた片手は瑛くんの髪を少しだけかすめた。

「甘い!」
「いだっ!」

そして瑛くんは再び私の頭にチョップをくりだす。けど、顔は笑ってる。

「ほら行くぞ。ボサッとしてると置いてくからな」
「あ!もう…待ってよ!」

- end -

20100204

久々すぎて文章の書き方がわかりません