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061...走るその姿

山田花子、高校一年生。湘北高校バレー部所属。
未経験者で体力がないものだから、部長に言われて毎朝の走りこみが日課になってしまった。最初のうちはしんどくてもうやめたいって思ったけど、最近それが少し楽しくなってきている。
「桜木くーん!」
今日もそのきっかけをくれた彼の姿が、公園の向こうから見えてくる。
「おはよう!」
「おはようございます」
どうやら桜木くんは、自主的に走りこみをやっているらしい、えらい。
桜木軍団なんて言われてるけど、この人はきっとすごく優しい人だ。フェミニストだし。
「暑くなってきたよね」
「もうすぐ夏ですからね」
こうして毎朝一緒に走りながら話すうちに色々なことが見えてくる。
あのバスケ部のゴリ……もといキャプテンを打ち負かした脅威の初心者が桜木くんだってこととか、ようやくシュートの練習をさせてもらえるようになったとか。
「お互い試合も近いよね、桜木くんは出るの?」
背の高い彼を見上げると、不敵な笑みを浮かべている。
「愚問です。この天才・桜木を試合に出さんなど、あろうはずが……」
まあ確かにキャプテンに勝っちゃうくらいだから桜木くんはすごいのかもしれない。感心していると、フッフッフ、と笑って桜木くんは何か妄想の世界に飛び立ってしまったようだった。
たまにある。何を考えてんのか知らないけど。
そしてこの後大体こうなる。
「桜木くん、前、前!」
「えっ」
ゴン、と音を立てて電柱にぶつかった。まるで漫画だ。
「大丈夫……?」
立ち止まって、首にかけたタオルで汗を拭きながら尋ねると、割かし平気な顔で「天才ですから!」と元気な返事が飛んでくる。
天才であることと怪我の有無はあまり関係ない気がするけど。
「アハハ、そうだね。試合の日、都合がつけば応援しに行こうかな」
「是非!それなら俺もバレー部の応援に行きます」
「ありがとー!」
私ももっとがんばれば、試合にちょっとくらいは出させてもらえるかな。
いいかっこしたいのは私だってそうなんだから、もっとがんばらなきゃ。
並んで走り出した足音のペースがちょっとだけ上がった。

- end -

20101102

花道の口調がわからなくなった!変だったらすいません!