100 Title



080...足踏み

「いかーん!イカンと言ったらイカン!」

視界の端で、『あ、またはじまったのね』って顔がどんどん増えていく。毎度おなじみ、わたしとギャブレー様の言い争いなわけだから、それはしょうがないんだけど。
「なんでですか!今度こそ、ばっちりとっちめてきますって!」
「それがイカンのだ!このわからずや!」
「わ、わからずやって……ひどい……」
よよと泣き崩れて見せると、さすがのギャブレット・ギャブレーも罪悪感を感じたように顔をしかめている。
よし。あと一押しだ。
「わたし、こんなに尽くしているのに……というかこれからもそのつもりなのに……」
ギャラリーからは『あ、また泣かしてる』とか『罪作りだなぁ』とか、そういう声があがって、完全にギャブレー様が悪者になってしまった。
ていうか毎回この嘘泣きにひっかかるギャブレーさまもどうかとは思う。
思うけど、そこがこの人の美点なのだ。ギャラリーの中、ハッシャとイレーネだけは騙されずに毎度毎度呆れてるけど、わたしはこの人の、こういう素朴なところが大好きでしょうがない。
「身を粉にして働く覚悟なんてとっくにできています!ただ一言"いってこい"と仰ってくだされば……!」
「いや……だからそれは、ダバの連中を片付けるのは、私の使命だからお前には譲れんと言っているのだ!」
ちっ。
「ポセイダル様には、ギャブレー様ご自身が倒したとご報告なさればよいではありませんか!」
「そういう問題ではない!」
そういう問題だと思うけど……。
騎士道精神にこだわりすぎて、ギャブレー様は立身出世のこと、忘れ気味なんじゃないかなと心配にもなる。
ううん、忘れてはいないんだろうけど、そういう心配させちゃうくらいにまっすぐで純粋で、ときどきすごくかわいいひと。
それがギャブレット・ギャブレー。
「そうまで仰るのなら、ご出陣のときはわたしも連れて行ってくださいましね?」
胸元にすがりつくと、ギャブレー様はさらに顔をしかめた。これは嫌がっているのでも困っているのでもなく、照れているだけらしい。かわいい……。
「……あー……善処する」
「きゃあ!約束ですよ?」
視線を逸らしながらのお返事が嬉しくて、思わず飛びついてしまった。やっぱりこの人についていこう。わたしがこの身をささげて働けるのは、この人の下以外にあるはずがない。
一生ついていきます、ギャブレット・ギャブレー。
「ええい!まとわりつくなうっとうしい!」
「嫌です!」
「私はこれからシャワーをだな!」
「それならお背中流しますっ」
「いらんわ!」

- end -

20110405

書いたままほったらかしてました。ギャブレーくんは速水さんの無駄遣い…………。実にアホかわいかったです。