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088...布団に埋もれる

むかーしむかしの、それこそ原始人なんてのの時代から、せいぜい150年ぐらい前までは、まぁわかる。
何がって、人間が昼間に活動しなきゃいけないって理由。だって電気がないもの。
でも今はさ、真夜中だって繁華街は明るいし、お店だってけっこう開いてるし。
そろそろ本格的に夜型にシフトする新人類がいたっていいと思うのよ。

「はぁ、それでアンタはその新人類になるっていうんですか。どっちかって言うと、冬眠する人類第一号のほうが似合ってるきがしますけど」
ええい、憎らしい。
フンと鼻を鳴らしそうな顔で見下ろすジョルノの顔がヒッジョーに憎らしい。
「確かにどっちでもいいかもね。どっちにしろここから出なくていいわけだし!」
わたしのサンクチュアリ、布団の中はまさに天国。朝は低血圧の天敵、冬は寒がりにとって地獄。
「そりゃあ、僕だってアンタが常日頃どういうライフサイクルなのかは知ったこっちゃないですけど。けど今日はちゃんと迎えに来るって約束してたじゃないですか、ジェーン」
うっと言葉に詰まってしまって、頭から布団をかぶって隠れてしまう。
そうなのよ。悪いなって、そのくらいわたしだってわかってるのよ。
ちゃんと、ジョルノが来るまでに目を覚ましておしゃれしてお化粧して、いっとうキレイなわたしを用意してるはずだったのよ。
でも朝には勝てないのよ。申し訳ないけど。二度寝しちゃってこんなザマで、これじゃあそろそろ愛想つかされてもしょうがないってのは、重々承知の上なのよ。
そんな感じで布団の中でめそめそしていても、サンクチュアリの外のジョルノにはわかったもんじゃないだろう。
「ジェーン、まさか僕がいるのに寝てやしませんよね」
そこまでアホじゃないわよ、という意味も込めて寝返りを打ってみせる。
「だったらとっとと支度してください。手間がかかるようならアンタを布団で簀巻きにして連れて行きますからね」
スマキ?
ジョルノが何を言ってるのかさっぱりわからないわたしの体がぐるりと回された。なんか苦しい。
「ちょっとぉ!」
「簀巻きって言うのは、こういうのです」
はぁ、つまりロールケーキの中身になっちゃうわけね、わたしが。
「わかったから!担がないでよ!ほんとに荷物みたいに積み込む気じゃないわよね!」
「わかりませんよ。なにしろ急いで見せたいものがあるんですから。……ほら、準備してください」


「ドイツのお店で見つけて、こっちで指輪に加工したんです。気に入りました?」
「……ウン。キレイなオレンジ色、なんていうのかしら?」
「シトリンです。カットがちょっと変わってるでしょう」
「本当、朝焼けみたい…………って、何よその顔」
「いえ、朝焼けとか見たことなさそうなのにとか、思ってませんよ」

- end -

20110204

ジョルノさんは歯の浮くようなセリフをポンポン仰ると思いますが、書いているわたしがそれにおいつけませんので最後で台無しにしました。テヘッ。