3rd Anniversary.



青春一色に私を染める

どこか遠くで、何かが散らばる音がする。

だが、誰も動かない。
ブリーフィング・ルームにはミユ・タキザワ軍曹とルース・カッセル中尉の姿がある。
が、フォルド・ロムフェロー中尉の姿はない。報告書を作成していた二人は、ややあって顔を見合わせると同時に呟いた。

「またか」
「また、でしょうね」




「いいかげんにして!」

書類の束をガンダムにたたきつけたのは白衣の女性、ジェーンバーキン。大学の工学部卒業後にアナハイム・エレクトロニクスに就職。現在はサラブレッドへ出向し、機体データの収集の見返りにプログラム関係のメンテナンスを一任されている。
その才媛はすべらかな肌に青筋を浮かび上がらせんばかりに激昂している。
彼女の目の前にいるのがフォルド・ロムフェロー。
ジェーンとは同じ年の24のはずだが人に与える印象はもっと幼い。

「毎回毎回こうも壊されちゃ取れるデータも取れないわ!」

きつく睨みつけると、フォルドは組んでいた腕を解き、先ほどジェーンがそうしたようにガンダムの足を叩く。

「壊してんのは俺じゃねえ!」
「壊されるような操縦をするなって言ってるのよ!」
「技術屋が俺に指図するな!」

格納庫の隅で、アニー・ブレビッグ上等兵はため息をついた。先ほどフォルドが蹴り倒した工具箱を片付けながら、「もうやめたら」と声をかけてみる。
すると数メートル離れたところから睨まれる。

「幸い今回もデータもフォルドも無事だったんだしさ」
「アニー、貴女も言って頂戴よ!?このままじゃ、5号機がめちゃめちゃにされちゃうわ!」
「…そりゃあ、そうかもしれないけど」
「アニーまでコイツの肩を持つのかよ!?」

埒が明かない。
肩を落として、またため息をつく。
それはここにいる誰もが思っていたようで、ジェーンとフォルドもブリーフィング・ルームへ向かおうとガンダムの下を離れようとした。

「艦長にも話をするわ」
「へっ!好きにしろよ」

どっちもどっちだとは口に出さず、工具箱を運ぼうとしたアニーは異音を聞いた。
金属がきしむ音。日ごろ、聞いている。装甲を引き剥がすときの。

「危ない!」

見上げたときにはもう遅かった。
ガンダムの右腕から、大きな装甲片が落下していた。

「え――」

理解する間もなく、ジェーンの視界は焼け焦げた白に覆われていく。

ジェーン!フォルド!」

轟音と、飛び散った破片からかばうように顔を覆っていたアニーが真っ青なままに二人の名を呼ぶと、うめくような声がした。急いで駆け寄ると、少しはなれたところでもつれたように転がる姿があった。フォルドがジェーンごと、破片を避けたのだとわかると一気に安堵感が押し寄せる。
格納庫は騒然とし、わらわらと人が集まってくる。

ジェーン、フォルド!怪我は…」
「いちち…俺は平気、だ」
「……大丈夫よ」

アニーは二人のそばにしゃがみこんだ。

ジェーン、足に怪我してるじゃない!」
「え……本当だわ…」

気づかなかったようにジェーンは足首の切り傷を見た。破片が刺さって結構な量の血が流れている。

「すぐ医務室に――」

アニーが肩を貸そうとしたが、それはフォルドによってさえぎられる。この期に及んで何をするのかと思っていると、彼はジェーンを抱き上げた。たまらずジェーンは、

「ちょっと!自分で行けるわよ!」
「うるっせえ!怪我人はおとなしくしてろ!」

ジェーンが言い返せないでいると、フォルドは医務室に向かってずかずかと歩き出した。

残されたアニーは落下した装甲の片づけを指示しながら、

「ちょっと、見ものだったわね」

同じ赤い顔をした二人の姿を反芻していた。

- end -

20100518

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