「えーと…小麦粉でしょ、それからバターにチョコレートに砂糖…砂糖はグラニュー糖がいいんだっけ…」
「あれっ?ジェーンさんじゃん!なにしてんの?」
「わっ!びっくりしたなぁもう…ジュドー君こそなにしてんの?スーパーなんかで」
「俺?俺はただの買い食い」
「スーパーで?」
「だって安いじゃん。惣菜も弁当もコンビニのより断然美味いし」
「(なんか所帯染みてる台詞…)」
「ほら見てよ、これなんか今日だけ98円なんだよ?」
「えっ!?そのクッキー超おいしいやつだよね?…私も買っちゃおうかな…」
「急がないと売り切れちゃうよ〜。で、ジェーンさんは何買ってるの?」
「ああこれ?ホラ、もうすぐバレンタインだからさ、みんなに配ろうと思って」
「手作り?」
「うん」
「……ジェーンさん、料理できるの?」
「(ムカ)失礼な!甘く見てもらっちゃ困るわね!」
「あ、そうだよねー!」
「そうよ、目玉焼きぐらい作れるんだから!」
「えっ?」
「あとはそう、ホラ、ええと…その、アレよアレ!」
「………」
「とっ、とにかく料理ぐらい出来ます!出来るんです!」
「はぁ、そう」
「…信用してないでしょ」
「いや…」
「何よ」
「だって、お菓子作りに有塩バター選んでるんだもん…」
「!!!」
「普通さ「違うわよ!」」
「これはホラ、アレよ!塩キャラメル的なアレ!」
「(さっきからアレしか言ってないな)」
「いいよね、塩キャラメル!なんつーの?甘いけどしょっぱいみたいな?(食べたことないけど)まぁでもジュドー君が普通のお菓子欲しいんなら、塩入ってないバター「無塩バターね」…無塩バター、一応買っとくけど」
「(ぷっ)いや、ジェーンさんが思うように作ったのが食べたいんだけどなぁ」
「(コイツ、絶対わざと言ってる…!)」
「ジェーン、授業中に寝るなと何度言ったらわかるのだ」
「いや、今回はちゃんとした理由がありまして…」
「居眠りに理由があるか!」
「ま、まぁそう言わずに聞いてくださいよ!ガトー先生!」
「…………」
「(ドキドキ)」
「……………………言ってみろ」
「(ほっ)明日、バレンタインじゃないですか」
「バレンタインだと?」
「2/14ですよ」
「知っている。バカにするな」
「(別にそういうつもりじゃ…)で、私も頑張って手作りチョコにチャレンジしているわけでして」
「何?チョコレートを?」
「はい」
「カカオの豆から栽培するのか?」
「はぁ?なわけないでしょ!溶かして固めるだけです!」
「そうか。カカオはこの国じゃ育たないからな…で、それは"作る"というのか?」
「(一々ツッコミがめんどくさ!)まぁまぁまぁ!で、チャレンジしているわけですよ!」
「それはさっきも聞いたぞ」
「(ムカッ)…で、中々うまくいかないんですよね」
「溶かして固めるだけなのにか?」
「えーそうですよ!焦がしたりしてるわけですよ!」
「で、それと居眠りとどう関係があるのだ」
「…………夜中まで何回も練習してたら寝るタイミングを逃しました」
「(…そこまで間抜けだったか)」
「今アホとかそういうこと思ったでしょ」
「…いや」
「先生って女心がわかってなさそーですもんね」
「何?」
「毎年バレンタインが近づくたびに何人もの乙女勇者達がチョコレートという名の剣を振りかざしているというのに、先生みたいな男の人ってなんかそういうの興味なさそうだし、現に私の涙ぐましい努力を鼻で笑うし」
「笑っていないが」
「おんなじよーなもんです!はぁ、先生にはもうチョコレートあげません」
「…………」
「…先生?」
「いや、ちょっとガッカリしただけだ」
「なんですかジェリド先輩。こんなとこに呼び出して」
「おー来たなジェーン」
「来ましたよ。放課後に呼び出しなんて不良みたいですね」
「お前相手にんなことするわけねーだろ」
「えっじゃあなんですか、もっといかがわしいことするとか?」
「………」
「そんな嫌そうな顔します!?普通!?」
「お前に手を出すほど俺は困っちゃいねえ」
「さいですか」
「お前を呼んだのはこれだよ」
「紙袋?…わっ、それ全部バレンタインのチョコですか!?」
「おう」
「へぇ、全部義理?」
「なんだよその前提。知るわけねぇ。一方的に渡されたのもあるからな」
「(渡して逃げたのか…本命だな)」
「で、俺は甘い物が苦手だ」
「はぁ」
「お前が半分食え」
「!?嫌です!なんでそんなこと、私がしなきゃいけないんです!」
「男には頼めねーだろ。もらえなかった奴はそんなことされたら余計惨めだろ」
「だからって…嫌ですよそんな、想いというか重いというか、食ったら呪われそうなチョコ食べるのは」
「毒を喰らわば皿まで、だ」
「まだ食ってませんが」
「俺だって妥協して半分食うって言ってるだろ」
「あーもうはいはい。食べますよ!」
「恩に着る」
「(渡しづらくなったなぁ、チョコ)」
「(ジェーンはいつ俺にチョコをくれんだ?)」