虹のワルツ

18.バツ印の数え歌(新名)


別に嫌じゃないけど自分が好き好んでやってるわけでもない。そんな、週末の日課のナンパ合戦。
きれーなお姉さんは好きだし?俺の実力(ってのも変だけど)試す場にもなるし?
そんなことを考えながらコンビニの立ち読みコーナーで立ち読みするふりをして、道行く人たちを物色してた。って張り込み中の刑事か、俺は。
くあーっとあくびを一つして、細めていた目にすごいもんが映る。正しくは、すごい美人、だな。
「うっわ……マジパネぇ……」
思わずこぼれた独り言に、隣でグラビア誌を立ち読みしてたおっさんが怪訝そうな顔をした。
薄いピンクのファーコートにホットパンツから伸びた長い足、ニーハイブーツがマジ似合ってる。
声をかけないなんて礼儀を失してるでしょこれは。男として。
ってことで俺は読みかけの(つってもろくに読んでなかったけど)漫画雑誌を棚に戻して、急いでコンビニの外に出た。おねーさまは、コンビニの外でもらったフリーペーパーを読んでいる。
「こーんちは!」
声をかけると、ナチュラルメイクの顔が驚き一色に染まる。意外。こういう格好してる人って、けっこうメイクが濃いもんだと思うけど。
「はい……?」
結構背の高い彼女は、俺の言葉に首を傾げながら、フリーペーパーを折りたたんだ。
「彼女暇?」
「彼女って私ですか?」
あれ?
自分を指差しながら逆に聞き返される。確かに彼女ってのは三人称なわけで、こうやって二人向かい合ってるときに相手を呼ぶなら彼女なんてのは使わないけど…………じゃなくて。
「そ!決まってんじゃーん。で、暇?」
気を取り直して、俺は髪をかきあげながら尋ねた。すると彼女は困ったように顔の前で手を振る。あー、やっぱダメかって思ったのもつかの間だった。
「ごめんなさい。今私、お友達の家に招かれていて、暇ではないんです」
えっなんでこんなに丁寧に返されるの??
正直毒気を抜かれた俺は、次はこの場からどうやったら格好良く立ち去れるかを考えなければならなかった。
「あ、そう……なんだ……」
「ご、ごめんなさい……何か御用でした?」
いや俺しゅんとしてるわけじゃなくて、頭使ってるから生返事になっただけで!そこんとこ鈍い(んだろう、きっと)彼女は気遣うような言葉をかける。見た目とのギャップありすぎだろー……。
ため息をつきたくなったそのとき、
夏碕ちゃん!……もー外にいたの?とりあえずおまたせ!」
コンビニの自動ドアが開いて、これまたかわいい女の子が出てきた。夏碕ちゃん。夏碕って名前なのか……。姉妹かな?似てないけど。
こんなにパネぇ姉妹を前にしても、そのときの俺は声をかける気にもなれなかった。なんつーか、綺麗なお姉さんに声をかけたものの逆に諭された気分になって良心の呵責にさいなまれてる最中?みたいな?
「ごめん、コレに夢中になっちゃって……美奈子ちゃん、“はばたきミックスジュース”売り切れてなかった?」
夏碕さんの声に俺の耳が反応した。
「うん!なんで?」
「このフリーペーパーに、“売り切れ必至”って書いてあったの。でもラッキーだったね?」
「え!ちょっ、ここ、“はばたきミックスジュース”売ってんの!?」
慌ててかわいいほうの彼女に聞くと、うん、と一言返ってくる。
「いい情報あんがと!じゃ!」
かっこいいか悪いかはもうどうでもいいや。つーか、ナンパなんてやってる時点でかっこよくねーだろうし。
あーあ、高校入ったらやーめよ。

「……知り合い?」
「ううん?」

20100724