虹のワルツ:番外?



さえきくんとはりやくん

「い―――……らっしゃいませ」
「お、俺様の貸切か今日は? ってか、おいこら佐伯てめ、何で一瞬止まったんだよ」
「…………お前くらいだよ。準備中の札がかかってんのに入ってくるのは」
「いいだろ別に。あと5分で営業開始じゃねーかよ。札とってきてやったぜ」
「あ!お前なんで勝手にそういうこと……」
「こまけーことはいいだろ。ってことでいつもどおりに四人前、持ち帰りで」
「……はぁ。かしこまりましたー。ブレンド二つに、アメリカン一つ、で、お前がホットミルクだったっけ?オレンジジュース?」
「ぶっとばすぞ」
「はいはいカフェオレな。―全部ホットでいいんだよな?」
「おう、さみーからな」
「四人前ってことは何?今日も練習?」
「いや?今日はそこの“HABATAKI ZOZO”でライブ」
「ていうかそんなさ、座ってゆっくりするヒマとかあんのか?」
「あ?本番前でも休憩中だからいいんだよ」
「あそう。どうりで、いつもみたく飯作れとか、そういう無茶振りがないわけか」
「まぁな?――あ!お前、こないだのアレ、辛すぎ!俺様の喉が潰れたらどーしてくれんだよ」
「は?別に大したことないだろ、あのくらい」
「あるんだよ!……ハァ、もういいや……」
「針谷の味覚はお子様だからな。“ハンバーグ、目玉焼きのせで”つってさ」
「うるせえよ」
「ん?……お前今日、本番なのか?」
「あ?おう。なんだ?聴きに来たいのか?」
「いや全然」
「即答かよ」
「本番前なのに、お前ってパシリだったんだなって思って?」
「……公正なるじゃんけんの結果だ。ハァーア、マネージャーとかいりゃあいいのになぁ」
「ぶっ……」
「んだよ」
「別に?」
「あ、頼みがあったんだった」
「……何?」
「次のイベントのフライヤー、持ってきたから置かせろ。そーだよそれで俺様がコーヒー買いに来たんだよ」
「じゃんけんじゃなかったのかよ。ってかおまえそれ、人にもの頼む態度じゃないよな」
「ハイハイ置かせてくださーい。そこのマガジンラックに挿しとくぜ」
「……またそんなにたくさんのチラシを」
「チラシじゃねえフライヤー」
「どっちも一緒だろ……ハァまあ一応、お得意様だからいいけどさ」
「なんだよその一応ってよ」
「うちはコーヒー飲むところ。酒飲むところじゃないの」
「あ?練習終わってからのことか?」
「そーだよ」
「いいじゃねえか。ここで飲んで、ボウリング場でダーツして帰る。それが俺たちのコースなんだからよ」
「ハァ……まぁお前らのアレ、生活習慣とかに口出す気はないけどな」
「まだ若いんだから無理したって平気だって」
「そういう言い方がじじむさい」
「かーっ!お前だって同い年だろが。あ、アイツから聞いたぜ?お前ちゃんと寝てんのかよ?」
「アイツって……ちょ、お前なんで……!」
「何だよ、ヤキモチかぁ?ヒュー!」
「ちがっ、いや……っていうか、な、」
「ああもう誤解すんなっつの!アイツの友達がウチのライブチケット欲しいつって電話してきたんだよ!そんときに聞いたの!なんだってこの俺様がお前らのノロケ話なんか聞かなきゃいけねえんだよったくよー」
「…………」
「あーあー“安心した”みたいな顔してら。元・羽学のプリンスも形無しだな」
「……ウルサイ。そういうこと言うんならサービスと思って入れといたマドレーヌは抜きだ」
「何!?あっ!コラ!ちょっと待て!」
「だあっ!?もう!カウンターの中に入んな―――いらっしゃいま、せ」
「…………ひょー……すっげえなアレ……地上げ屋かなんか?」
「お前ちょっと黙ってろ。……二名様ですか?奥のテーブルへどうぞ」
「…………なあ」
「…………なに」
「絶対俺のほうがまだ性質のいい客だと思うぜ」
「…………」

20101012

やーこの二人が好きなもので。きっと卒業しても仲いいんだろうな!