くびれたラインのあの子はね



長いこと一緒にいる俺たちだけど、最近、美奈子を見ててわかったことがある。
アイツ結構おっちょこちょい。
昼ごはんを食べてる今も、話に夢中になったりするとポロポロポロポロ何かとこぼす。
いつだっけ、遊園地に行ったときにおにぎり作ってきてもらって、そのときもほっぺにご飯粒つけてたし。
まぁ、そのくらいならカワイイもんだけど、さすがにソースがたっぷりかかったハンバーグがお箸から落ちていったときは、俺だって声を上げてしまった。

「あっ……」

当の美奈子は声にもならなかったみたいで、唖然として茶色く汚れた夏服のベストを見つめている。
それから顔をあげて、泣き出しそうな顔で「どうしよう〜〜」って、俺に助けを求めてきた。
こういう役割はコウのほうが似合ってるんだけど、幸か不幸か、いや、幸いにしてここに兄貴の姿はない。

「やっちゃったなあ……シミになっちゃうよ?早く洗ったほうがいい」
「い、今?」
「うん。ベストだけ脱いで、汚れたとこだけ水洗いしとけばいいだろ?」
「そ、そうだよね……ブラウスは替えがあるけど、ベストはクリーニングに出したら代わりがないし……」

ぶつぶつつぶやいて、美奈子はもそもそと白いベストを脱ぎ始めた。
別に裸になるってわけでもないのに、女の子が服を脱ぐ動作ってなんかすっごい、エロい。
思わず緩みそうになる頬を隠すように汗をぬぐうフリをしながらも視線だけははずさない。というかはずせない。
何が、とは言わないけど、もうちょっとあのブラウスが薄かったら、見えるような気がするんだよなぁ……。



***



「やっぱりベストがないとちょっと寒いや……」

放課後によった喫茶店で、美奈子が腕をさすりながらつぶやいた。
中途半端に洗ったベストはまだ生乾きで、カバンの中にビニール袋に入れられてつっこまれているらしい。
確かに学校の教室よりも喫茶店のほうが冷房が効いて寒いのは事実。だけどおっちょこちょいでうっかりの美奈子はカーディガンとか、羽織り物の類を持ってきたりはしてないだろう。なんとなくだけど、確信してる。

「外は暑いから、なんだかこんなに冷えてると体壊しそうだよね」
「そうだな……あ、」
「どうしたの?」
「雨、降りそう」

えっ?と、美奈子が素っ頓狂な声を上げたのをきいて、ああ、これは傘も持ってきてないんだろうなっていうのがわかって笑ってしまった。
しっかりしてるようでしっかりしてないとこがまた、かわいいんだけど。

「えぇ……どうしよう、傘持ってきてないのに……」
「そんなすぐには降んないよ」
「でもほら、真っ暗になってきてるし……帰ろう?」

首をかしげておねだりするように上目遣いまでされると、断れない。
これには弱いんだよなぁなんて幸せな自嘲をしながら店を出ると、湿度の高い空気がむせかえるようにたちこめていた。

「あ、ホントだ。もう降りそう」
「うわ……。ね、琉夏くん、コンビニまで走って、傘かっていこ?」
「オッケー」

言うやいなやに走り出した美奈子と並んで数十秒、アスファルトにシミができ始めたと思った次の瞬間に俺たちは豪雨に見舞われた。

「アハハ!すっげー雨!」
「笑い事じゃないよ!教科書までぬれちゃう!」
「オマエもって帰ってるの?えら――」

横を走る美奈子を振り向いて絶句。走るスピードが少し落ちてしまった。
……そうか、水色なのか。

「もって帰ってるよ!ちゃんと予習とかしなきゃいけないから……」
「…………」
「琉夏くん!?」
「あ、うん、エラい!」
「っていうかそれが普通……って、そんなこと言ってる場合じゃないよー!」

確かにそんなこと言ってる場合じゃないかも。
後姿の透けブラもさることながら、びしょびしょのブラウスが肌にはりついてんのがたまらなくエロい。もーちょっと明るかったら肌の色まで見えそうなくらいにぴっちり張り付いて、ウエストのくびれも丸わかり。いやもういろいろ丸見えなんだけど。
ああ、おっちょこちょいでうっかりでどっか抜けてる美奈子ちゃん、キャミソールなんて着てくれなくてありがとう。
ちょっと後ろに下がってみてそういう感想なわけだから、これ向かい合ったら絶対、ヤバイ。
好奇心と欲求はあるけれど、さすがに前にまわってのぞきこんだらまずいだろ。
あーでも水色、イイよなぁ……見たい。
コンビニまであと100メートル、俺の中の天使と悪魔の戦いはなかなか終わりそうにない。

20110801
20120416加筆修正

おっぱいの日記念に書いたものですが全然おっぱい関係ない。とりあえず透けブラ万歳!

title from OL


20120421追記:::なんと!なんと!『favorite one』の小早川さんがこの作品の続きを書いてくださいました!
ひゃっほーい!あざーす!なんというものを書いたことかと思ったりしたけど俺エライ!小早川さんありがとうございます!
透けブラの次は○○○○ですよねですよね!そして松岡さんにもありがとう!そういうわけで全力でみなさん、『favorite one』の『水色ラプソディ』を、えぐるようにクリックすべし!すべし!