男の子と女の子



自分が男だからなのだろうが、女の子という生き物はまったく、理解できない。
多分、女の子は「男の子なんてちっとも理解できない!」なんて思っているんだろうけど。

その日のデートは映画鑑賞。あまり興味のないラブストーリー。
観終わった感想としては、「そんな非現実的な話のどこがいいの?」
なんて思っても見たけれど、リアルすぎてドロドロの話なんて、俺だって観ても楽しくもない。

「はぁ〜・・・感動したねぇ、ブチャラティ」

突拍子もないような話が好まれるのはわかるけど、ジェーンのように感じすぎる人間がいるってのは理解できない。
俺の横で腕を組んで歩くジェーンの目は少し赤くて、多分、というか確実に暗い映画館の中でこっそり泣いていたのだろう。
(ちょっとそれを想像すると可愛いな、と思ってしまう)
そして周りを見渡せば、同じように赤い目をした人間はかなりいる。酷いと未だに涙を流しっぱなしの人とか。
大抵は女の子なんだけど、ごくまれに目元をゴシゴシこすってる男がいる。
ウソだろ。
ジェーンに見えないように顔をしかめた。俺の方が、感覚がおかしいんだろうか。



「コレもおいしそうだし・・・ああ!でもこのピッツァも素敵!」

デートだと必ず昼食とか夕食を一緒に摂るんだが、ジェーンはいつもたっぷり10分はメニュー選びに時間をかける。
俺は10秒もあれば食べたいものを選べるから、少なくとも残りの9分と50秒はジェーンがメニューとにらめっこしているのを眺めることになる。
小さな顔が一生懸命にしているのは確かに可愛いけれど、その間は声もかけづらいから割と寂しい。
時々、他の女の子を見ててもばれないんじゃないかなんて思う。
思っただけで、実際にやったことはないけど。

「ん、やっぱりペスカトーレ!」

ようやく決まった、けれどジェーンにはこのあと更に重大な仕事がある。

「食後のドルチェは・・・洋ナシのソルベかしら・・・ティラミスかしら・・・」

食事よりもドルチェを選ぶ目つきの方が真剣なのはいつものことで、ジェーンにとってドルチェがメインで食事は全部前菜なんじゃないかと思ってしまう。
甘い物が好きなんだろうな。
だから女の子は甘くてやわらかくてすべすべしてて、心地いい。



女の子に関して、一番よくわからないことがある。
つまりその、セックスのこと。
ダメ、なんて言うのは、ほんとはそうして欲しいからってことに気づいたのは結構最近。
開けっ広げになるのが恥ずかしいからなのか。そう思われるのが恥ずかしいのか。
そこは(そこも)よくわからないけど、小さな嘘つきの唇は塞いでおいた方がやりやすい。
それも、嫌だって言うけど望んでることだろう?

「ダメ。ストップ!」

あれ・・・
ジェーンはブラウスの下の俺の手を払いのけて一メートルほど俺から離れていった。
あれは本気で嫌がってるときの顔だ。何か悪いことしただろうか?
というか、“この状態”でストップなんてことになったら、男の子は結構辛いんだけど。
いつものようにキスしながら抱きしめて、倒れこんで、それから下着のホックを外して・・・

「だってブチャラティ、ホック外すのが早いんだもの」

むすっとした顔でジェーンは胸元で腕組みをしてみせた。
そういう動作もすごく愛らしい。
しかし・・・ホックを外すのが早いのがそんなに気に喰わないことなのか?
外すのにもたついてたら、それはそれでまた何かと言われそうだとは思うのだけど。

「だってなんだか・・・・・・経験豊富みたいでヤなの」

ジェーンは拗ねてしまった。
そうか。
君は俺の後ろに見える何人かの女の子を見てしまったのか。
拍子抜けしたと言うか、でも反面納得したような気になってしまう。

経験豊富でもないし、仮にそうだとしても現在進行形の今は君しか見えていないのにね。

けれど、それをジェーンに説明するのはすごく、難しそうだ。
本当、女の子ってのはよくわからない。


わからないけど、甘くて小さくてやわらかい君のことは大好きでしょうがないから、
拗ねた顔しないで笑って欲しいんだけどな。

20080707

ブチャラティである必要性が感じられない・・・