ソロモン海域でつかまえて!



Vol.1 人生最大の出会い

 宇宙世紀ダブルオー……あら?ダブルオーなんだったかしら?ま、どーでもいいですよね!そんなことより本編本編!
 ……え?なに?ダメなの?はっきりしろって?まったく……調べるからちょっと待ちなさい……。

 えー、ゴホン!

 宇宙世紀0078。ここは地球連邦のコロニーの一つ、サイド3。さらにフォーカスを絞ってみましょう。

 見えてくるのは軍の兵舎のようなものです。え?連邦軍なのかって?残念ですが違います。各コロニーは防衛のための軍備を整えることが許されているんですよ。ま、これが後々のジオン軍になっちゃうんですけどね。なんで私がそんなこと知ってるかって?どーでもいいでしょそんなこと。

 申し遅れましたが、私、ララァ・スンといいます。とある事情で兵舎の中でめんどくさいナレーションやってます。

 今、その兵舎のちょっと豪華な一室で美人な軍人さんがこれまた豪華な机にデーンと脚を乗っけてなにやら文句言ってます。

「副官が欲しいな、それも有能なのが」

 彼女、ジェーンバーキンはこの軍の中佐です。けっこう偉い人なんです。だからって机に脚乗っけていいわけじゃないですけど。しかも彼女年齢は伏せとくように言われましたがまだまだ若いそうです。若くして高級仕官ってことは、そう、有能なんです。

「そんなー!私がいるじゃないですか!!」

 今悲痛な叫びを上げたのはジェーン中佐の現・副官。名前?決めてな……ゲフン! モブキャラなんでどーでもいいです。女性です。

「お前が無能とはいっとらん。ただこう、男手が欲しいのだ」

 ジェーン中佐はめんどくさそうに手をひらひらさせながら副官に一応フォローをしてやっているようですが、副官さんはあんまり釈然としてません。そりゃ、そうです。有能なのが欲しいなんて、自分が有能じゃないって言われてるのも同然ですからね。

「中佐〜今まで副官は女性ばっかりだったじゃないですか〜……なんでまたいきなり……」
「決まってるだろう?」

 わかりきったことを聞くなといわんばかりに不機嫌さをあらわしたジェーン中佐。

「お前に肩をもまれても力が弱すぎて全く凝りがとれん。あと、模様替えするときに家具を運ぶのが便利だろう?それから電球の取替えも男の方が背が高くていい。それからカーテンレールの掃除に……」
「ちゅうさあ〜」

 ジェーン中佐の副官というのは名ばかりで要するに体のいい雑用係のようですね。というかそんな雑用、副官にやらせないで誰かにやってもらえばいいのに。

「そんなこと言ってないで、もうすぐ凱旋式のお時間ですよ!とっとと礼服に着替えてください!」
「あ?もうそんな時間か……かったるーい」
「ああもう!そんなことがギレン閣下のお耳に入ったらどうすんです!」
「総帥の名を出すな……ああ気が滅入る」

 ジェーン中佐、ギレン総帥のことが非常に嫌いみたいです。なんでって?それは凱旋式で明らかになるんじゃないでしょうか?


 凱旋式、これは士官学校の予備役を終えて新しく入隊した新米兵士たちのパレードです。それをデギン公王を初めザビ家の面々、軍上層部が観るんです。ご苦労様な行事ですよホント。

「やあ、ジェーン中佐。今日も一段と凛々しいな」

 ギレン閣下は嬉しそうですね。どうやらジェーン中佐と犬猿の仲とかいうのではなく、ギレン閣下からの好意にジェーン中佐が辟易してる感じです。案の定引きつった笑いを浮かべて中佐は閣下に握られた手をひっこめようとしてます。あからさま過ぎますがそれに気づかないギレン総帥も総帥です。この人本当にIQ240なんでしょうか。

「閣下もご機嫌麗しゅう……公王陛下もますますのご健勝で……」
「うむ。ところで君は私の下で働く気はないか?君ならば私のために尽くしてくれるだろう?」
「え!?えーと……そうですね……でも私も今の仕事が気に入ってるんで……」
「この私が君を必要としているのだ……」
「総帥閣下!」

 登場したのはキシリア・ザビ少将。ギレン総帥とは不仲ですがそれを差し引いてもこの対応には彼女も呆れ果てているのでしょう。

「凱旋式が始まりますよ」
「(ちっ……)うむ、それではまた後でな!ジェーン!」
「(呼び捨て!?)は、はは……それでは……失礼します」

ジェーン中佐は心の中で「この眉なし!」と罵ったようです。私には聞こえました。ニュータイプですからね。

「全く……総帥の対応には手を焼く」
「中佐!」

 副官と一緒に席に着いた中佐はまたも副官にたしなめられています。彼女の副官なんて並大抵の人間じゃ出来なさそうですね。

「ほら、それより凱旋が始まりましたよ」
「んー?そうだな……」
「そうだな、って……せめて表面上は興味ありそうな顔してくださいよ!」
「そんなこと言ってもなあ…………?」

 興味なさそう、というかやる気なさそうなジェーン中佐の興味を引いたものが在ったみたいですね。
 彼女の視線を追ってみましょう。装甲車だったり、戦車だったり、まあ色々なのですがそういうものに乗って新米兵士達は敬礼したまま広場を凱旋しています。その動きに合わせて中佐が視線を送る先には……銀髪の青年がいます。

「どうしました?中佐?」
「…………」
「中佐?」

 視線を一点に固定させたまま口をあけてぼんやりしているジェーン中佐。ただならぬ様子に副官も心配しているようです。声をかけてもジェーン中佐は無反応。困った副官は掌をひらひら顔の前で振ってみますが……

 ぺしっ

「あいたっ!」

 まるで邪魔だといわんばかりに片手で払いのけるジェーン中佐。なんだか副官の彼女が気の毒になってきましたね。彼女も後悔していることでしょう。なにせ着任してからと言うものこんな扱いばかりなんですから。

「もういいや。ほっとこう……おとなしく見てくれればそれに越したことはないし……」


 おや?ジェーン中佐が副官殿になにやら言っています。言われている方の表情から察するにまたもや無理難題を命じているようです。

「なんで私がそんなことしなきゃいけないんですか〜!」
「それもお前の仕事だろう」
「中佐!そりゃ、兵がなにかしらよからぬことを企てているとかなら私だって情報集めぐらいしますけど、今は違うでしょう??なんでペーペーの兵士の身上なんて調べるんです?」
「上官命令だ。聞けんのか?」
「うっうっ……。職権乱用……」
「わかったらさっさとあの男のことを調べてこんか馬鹿者」

 さすがに不憫ですね。
 あの男、というのはさっきまで中佐があっつい視線を送っていた銀髪の青年でしょうか。あ、いや。さっきまでではなく副官にトンデモな命令を言い渡している間も視線を逸らすことなく、あまつさえ首を動かして彼の方を見ていますねえ……。
 それにしても、副官に命じて個人のことを調べさせるだなんて並の興味関心じゃあ、やりっこないことですよね。

 さてさて、サイド3にちょっとした波乱の予感です。

 ま、私には関係ないからどーでもいいんですけどね。

20080509